「谷口〜、あれ取って!!」
「はぃはぃ、解りましたよ。」
しっかりしている方だと思っていた。
自分にも他人にも厳しく、指揮官として欠如ない方だと思っていた。
お慕いし続けているうちに中隊長に変化が見られてきた。
たまに見せる不安げな表情。
あぁやはり中隊長殿も人の子。
厳しい仮面の下には人としての温かい心をお持ちなのだ
時折自分にのみ見せるその憂いを含んだしぐさ。
自分はそれほどまで中隊長の信任を得たのだ。
今以上に誠心誠意中隊長殿をサポートし続けよう…
…と、心に誓ったのだが…
呼ばれて返事をしなければ怒り出す。
休憩時間に戦況について語り合っていれば乱入してきて話題を変える。
親友の小島と親交を深めているとどっちが大切かと詰め寄り、話すら聞いてもらえない。
朝は一緒にお手てつないで登校…
一時期少し減った胃薬の量がまた元に戻り始めている。
でもなぜか、そんな苦労に悩んでいるはずなのに顔がニヤけて来る。
由々しき事態だ。
「ねぇ、谷口。」
「…あ、はい。」
「子供、ほしいよね。」
「え、えぇ、まぁ…っって…ハィイイイ??」
何気ない呼びかけについ空返事をしてしまったが、内容は深刻だ。
心臓が口から飛び出そうなぐらいドキドキする。
最近中隊長はこういうタチの悪い冗談が多い。
キスしようとか…
自分も健全な男子、興味がないわけではないのだが、この方は時と場所をわきまえないこともある…(汗
平静を装い中隊長を見る。
自分の動揺とは対称的に中隊長は優しげな瞳で公園の遊戯物で遊んでいる子供達を見ている。
不埒な考えを抱いてしまった自分が情けない。
「春になったらね、お弁当作って満開の桜の下でピクニックするの…楽しいだろうなぁ」
「子供は……まだまだ早いでしょうが、花見などは楽しいものです。」
「暖かくなったら今まで行けなかった所とかにも行って、いっぱい楽しい思い出作りたいな」
「ええ、貴女が見たことのないたくさんの景色をご紹介いたします。」
「絶対死なないで、絶対無理しないで」
「了解です。貴女もですよ」