ジロー+裕太



 「イチゴにしようかなぁ、うーんバニラも捨てがたいし・・・」
 お菓子コーナーの前で真剣に悩む不二裕太(14)。
 彼は何事に対しても一生懸命ある。
 
 「よし、決めた今日はバ・・・
 「イチゴにしなよ!
 
 裕太がやっとの思いでバニラに決めようとしたところある人物がそれをさえぎった
 裕太はこの声に聞き覚えが合った。
 絶対に忘れられない声
 自分が彼に負けたせいで上に行くことができなかった。
 裕太が心の葛藤を続けているとその人物は裕太の背にもたれかかってきた。
 
 「ね、ユータにはイチゴのほうが絶対いいって。ピンクすっごく似合いそうだしねv」
 「あ・・・芥川・・・滋郎さん・・・」
 「ん〜 覚えていてくれたんだ うれCな〜。」
 忘れられるわけないじゃないか・・・
 しかし当たった所でしょうがない・・・冷静に冷静にと心の中で唱えて俺は芥川さんに尋ねた。
 「で、どうしてあなたがこんなところにいるんですか?」
 ここは不二家の近所にあるスーパー
 氷帝からだって結構離れた位置にあるし、近くに芥川さんが住んでいるなんて聞いたことはない。
 「ん〜結構あっちのほうの学校に練習試合にいってさぁ。バスで移動している最中に見たことがある後姿があったから降りてきちゃった♪」
 見たことがある後姿?それってまさか・・・
 「そしたら本当にユータだったんだよね♪前は違う人だったからがっかりしたんだぜ。」
 なんかすごい行動力
 寝ているときと覚醒しているときのギャップはいまさらながら大きいと思った。
 
 「あぁもうなんか頭が混乱してきたからどうでもいいです。で、何いきのバスに乗ったら学校に戻れるんですか?
 いきなり芥川さんがいなくなったら跡部さんや榊監督とかが困るんではないですか?」
 「あはは。そんなこと気にしなくったって大丈夫だよ♪部員は200人もいるんだぜ。一人ぐらいいなくなったってわかんないよv」
 うちは集合時間とかにちょっとでも遅れたり、団体行動を乱すと観月さんから追加特別メニューが着くのに・・・やっぱ氷帝はちがうんだなぁ・・・と裕太が考えていると
 「それに”氷帝学園中等部テニス部”ってかいてあるバス探せば帰れるしね♪」
 ・・・・ちょっと待て、そんな行き先のバスここら辺じゃ走ってないし・・ってか多分どこにも走ってないだろう
 「あ・・あの芥川さん。そのバスってあぁいうかんじのバスではないですよね?」
 俺は信号で停止している都バスを指差した
 「あぁいうのじゃないよ〜もっと大きくてがっしりした感じの奴。あ、あんな感じ♪」
 芥川さんが指差したバスは観光バスだった
 ・・・やっぱり・・・芥川さんが飛び降りた(?)のは多分氷帝のテニス部専用のバス・・・うちの学校にもあるからもしかしてと思ったけど・・・
 
 「どうすんですか?そういう感じのバスもうここら辺じゃ通りませんよ!」
 「え?何々?そうなの?そんなにレアなの?」
 芥川さんは嬉しそうに言った。多分今の状況をあまりよく理解してないんだろう
 まさかこのまま置いてく訳には行かないし・・・
 俺は氷帝への行き方なんて知らないし
 あいつに頼るしかないか・・・
 
 「とにかく家に行きましょう。氷帝への戻り方調べるためにも・・・
 「え?マジマジ!!うっわぁユータんち行くんだ。すっげぇ楽しみ♪」
 「氷帝への戻り方調べるために家に行くんですよ。」
 「あはは。そぉだったね。ついでに帰り方さがそうぜ〜」
 ・・・まったく・・・
 
 
 「それにしてもユータすっごくいっぱいおかしかったね〜」
 「家に帰ると甘いもんなんてほとんどないんですよ。わさび入り煎餅とか、唐辛子入り柿の種とか・・・」
 「うっわぁ なんかすっげぇじじくさそうな食べ物ばっかだね。」
 「本当スよね。甘くてこれ食べてると幸せ!って言う感じのものがないんですよ。辛いと思いませんか?」
 「うんうん。わかるわかる。甘いものいっぱいとって気持ちよくなって寝るなんて最高だよね〜」
 俺たちは自分達の好きなお菓子について語りながら家路についた
 本当に幸せそうにお菓子について話す芥川さん。
 芥川さんの周りにも俺の周りにも甘いものが好きな人があまりいなくってなかなかこういう話をする機会がないから俺たちは大いに盛り上がった
 
 「さて・・・」
 家の前についたときは緊張する
 一応俺の家なんだけどやっぱり住んでいる訳ではないからちょっと居心地が悪いのかもしれない。
 いや、原因はそれじゃないのはわかっているんだけど・・・
 「ん?どうしたのユータ?家、間違ったの?」
 「い・・いえそういうわけでは・・・」
 「ふ〜ん。そうなの?なんかドキドキしてるみたいだから・・・さ、はやくいこ♪」
 そうだ、こんなところで戸惑ってる場合じゃない。早くこの迷子な先輩を家に返してあげなくっちゃいけないんだ
 すぅ・・・と息を吸い込んで裕太は覚悟を決めた
 
 ガチャ
 「ただい・・・
 ドドドドド
 「裕太!!どうしたの?オヤツ買いに行くって言ってから全然帰ってこないから俺はすごく心配してたんだよ。まさか誰かにつれさらわれたりしてないかって・・・
 怒涛の勢いで俺に向かって突進してきて訳のわからないことを囃し立てまくる兄貴…
 俺が家に帰るのに緊張する根本的要因だ。
 俺があきれて立ちすくんでいるとだれかが前に出てきた。
 思わず忘れかけていたけど芥川さんだ。
 
 「ユータをいじめちゃだめ」
 スッと兄貴が目を開けた。外気が2.3℃涼しくなったような気がする。こ・・こぇえ
 でも芥川さんにはそんな攻撃効いてないみたいだ
 「芥川・・・」
 「どーして消えるサーブがここにいるの?」
 「「え?」」
 思わず俺と兄貴の声がハモる
 「だーかーら、何で消えるサーブがここにいるのさ?ここはユータんちなんだろ?」
 「それってつまり僕の家でもあるんだけど・・・」
 「も〜、そうじゃなくって、なんでおめぇがここにいるんだ?って聞いてるんだってば」
 「ここは僕の家だからだって言ってるでしょ。」
 「なんでそうなるんだよ?ユータんちなんだよここは・・・」
 「あのさ、それは僕の家ってことなんだって・・・・・・」
 一向にかみ合わない二人の話を裕太はあきれて聞いていた
 そしてふと思い付いた。
 『それってもしかして芥川さんは俺と周助の関係を気が付いてないってことだよな』
 芥川に対する好感度をぐーんと上げながら、
 「あ・・あの芥川さん・・・」
 「ん?なに?ユータどうしたの?ちょっと待っててね。今喧嘩中。すぐに追い出してあげるからね。」
 「え・・あ、いやそうじゃなくって・・・」
 「え?ユータが家間違ってたの?」
 「いや・・・そうじゃなくって・・・あの・・・兄です・・・」
 「あに?なにそれ」
 「え・・だから兄なんです」
 「だから”あに”って何?」
 「え〜と、つまりその・・・」
 「不二裕太は不二周助。つまりこの僕の弟だってこと。」
 「・・・・・」
 さっきの喧騒とは打って変わってしーんとし始めた玄関
 やっぱ気まずいよな・・と思った裕太は
 「芥川さん・・・その・・・すみま・・・
 「そっかぁ道理でユータの様子が変だと思ったらそういうことだったんだね」
 「え・・あの・・・」
 なぜか芥川さんは俺をヨシヨシと慰めてくれているようだ
 「いきなり親が再婚したと思ったらこーんな意地悪な兄ちゃんまでできちゃったんだね。そんで掃除しろとか洗濯しなさいとかっていじめられてるんだね
 。」
 「してないよそんなこと・・・ってどうして僕がそんな小姑になっちゃうんだよ。」
 「え・・えと・・・」
 「ごめんねユータやな思いさせちゃって。さ気を取り直してユータの部屋に行こうね♪」
 「ちょ・・ちょっとなんでそういうことになるの?ねぇ芥川!裕太!!」
 さっさと俺の部屋へ急ぐ芥川さんと引きずられてる俺
 なんで芥川さん俺の部屋わかるんだ?
 
 「へ〜これがユータの部屋?綺麗に片付けてあるじゃん。」
 「え、いや、そのあんま家に帰ってこないから何にもない部屋なんですけどね。」
 さてこまったぞ、家に来たはいいけど俺の部屋に氷帝についての資料なんて何もない
 聞こうと思っていた兄貴にもあの騒ぎの後だから聞きづらい
 「まぁいいや ちょっと疲れちゃった。少しやすまない?ユータ」
 「え、あ、そうですね」
 そう言うと芥川さんはゴロンとソファーに横になった。
 すっかり忘れていたけれど芥川さんは今日試合をしてきている身だ。
 しかも兄貴と口論した後だ。目に見えない疲労がたまっていても不思議ではない
 「ん〜じゃぁお休み」
 「はい。おやすみなさい・・・って芥川さんそんな場合じゃ・・・」
 「Zzzz...」
 あ・・は・・早い。もう寝ちゃったよ・・・一体俺はどうしたらいいんだ?
 とりあえず観月さんにたずねてみようと思い俺は携帯を鳴らした
 
 「んふっ。どうしました裕太君。お兄さんに何かされましたか?」
 「い・・いえいまのところはまだ・・・」
 「そうですか。でも気をつけてくださいよ。なにせ相手はあの不二周助(棘)ですからね。気をつけすぎるってことはありませんよ」
 「はい。ありがとうございます。」
 俺はいい先輩に恵まれている。家に帰っている時でさえ心配してくれるんだから・・・と、感動した。
 「ところであの、うちから氷帝までの行き方を教えていただけませんか?」
 「ひょうてい?ひょうていってあの氷帝学園のことですか?」
 「あ、はい。そうです。」
 なんか心なし観月さんのこえにドスがかかってる気がした。
 「いいんです。裕太君はそんなこと知らなくても。練習試合のときとかは僕も一緒なんですからね。」
 「あ、学校からの行き方はわかるんですけど、家からの・・・」
 「(家からですって・・・まさか裕太君、氷帝に通う気なんでしょうか・・・そんなことはさせませんよ跡部!)」
 電話の向こうから殺気が感じるような気がする。なぜだろう
 「あ・・・あの観月さ・・・」
 「ともかくそんなくだらないことは気にしないでとっとて寝なさい。明日は朝連を入れて差し上げますからね!!」
 「え・・そ・・あ・・」
 ガチャンと電話は切れてしまった
 なぜか知らないが観月を怒らせてしまったらしい
 寝ろ・・・ったってまだ3時。いくらなんでも早すぎる。
 兄にも先輩にも聞けず裕太が途方にくれていると。
 
 ♪〜♪♪〜♪♪♪〜♪〜♪♪♪〜♪♪〜♪
 
 聞きなれない着メロが流れてきた。それは芥川のズボンのポケットから聞こえてくる
 「あ・・あの芥川さん。携帯なってますよ。」
 「Zzzzz」
 芥川はまったく起きる気がない
 もしかしたら家族の誰かがあまりにも帰りの遅い滋郎を心配して電話をかけてきているのかもしれない
 うちだって俺が帰る時間が予定より少しでも遅くなるようなら大問題だ。特に兄貴が騒ぎ出す。
 裕太はすまないと思いながら芥川の携帯を手にとった・
 
 「・・・げ・・・」
 どうやら発信者は滋郎の家族ではなく俺様何様跡部様だった。
 もうかなりの時間コールがなっている。切れたりすると厄介だろう
 裕太は意を決して電話に出た。
 
 「もしも・・・
 「こらジロー てめぇどこほっつき歩ってんだ!!
 「う・・・うわぁ。す。すみません」
 いきなり怒鳴られ思わず悪くもないのに謝ってしまう
 「・・・てめぇジローじゃねぇな。いったい誰だ?」
 「え・・あ・・不二裕太です。」
 「不二裕太?ちっ・・まさかジローの奴・・・おい、今そこにジローいるのか?」
 「え。あ。はい。家で熟睡してますけど・・・」
 「いきなりいなくなっちまったと思ったら・・・お前追っかけて行っちまったのか・・・」
 「えぇ・・・多分。」
 盛大なため息が聞こえた。跡部さんの気持ちもわかる気がする。
 「あの、それでですね。芥川さん氷帝への帰り方わからないって言うんですよ。俺も行き方知らないし・・・」
 一番大事な用件だ
 「また迷子かよ。いいかげんにしてほしいぜ。まぁともかく今から迎えをよこすからジロー捕獲しておけ」
 「お願いします。あ、家わかりますか?」
 「当たり前だろ?30分ぐらいでつくと思うから準備しとけよ…じゃぁな」
 
 
 「芥川さん、起きてくださいよ。お迎えが着ますよ」
 芥川を起こそうとするがまったく起きる気はなさそうだ
 「いっそのことこのままずっと起きてくれなければいいんだけどね・・・」
 「おい、兄貴。」
 さっきの喧嘩を根に持っているのか周助は不機嫌そうだった
 「冗談だけどね。ほら芥川起きな。後輩が待ってるよ。」
 「ウス。」
 いつのまにか兄貴の後ろに樺地が立っていた。
 氷帝VS青学戦のときも樺地が芥川を連れて行ったっけなぁ・・・
 「ウス」
 すまなそうに樺地がいうので
 「あ、気にするなよ。気をつけて帰れよ」
 「ウス」
 樺地は不思議な奴だった
 たった二言しか返さないけれど話が通じ合っているような気がする
 芥川さんは起きることなく樺地に連れられていった。
 
 
 「さぁて俺も寮に戻るかな」
 「え?今日泊まっていくんじゃないの?」
 「ん〜なんか観月さんに氷帝のこと聞いたらいきなり朝連入れられた。」
 「なにそれ?」
 「ま、さぼるわけにはいかねぇからな。じゃぁな兄貴。」
 「あ、裕太!・・まったくもう・・・」
 
 
 今日は芥川さんに振り回されっぱなしなきがしたけど楽しかったな。
 また今度ゆっくりデザートとかについても話したいな
 
 
 
 

 
 なんかいろいろな登場人物が出てきてごちゃごちゃになってしまいました(反省)
 芥川+裕太 氷帝とルドルフの甘党純粋ペア
 S&Hでも滋郎は不二兄弟とはペア名代わるんですよね
 滋郎にとって二人は特別な人たちなのかな?
 
 20040802 saga    
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