「受け取れ」
 「…はぃ?」
 


 校門を出るとそれなりに見知った男が立っていた。
 

 「え?氷帝の…跡部、さん…だ………」
 隣にいる金田が顔を引きつらせてつぶやいた。
 今日下校する相手が観月さんじゃなくてよかったぁ〜。なんてどうでもいいことを思う。
 


 「とっとと受け取れ」
 「え、あ、俺ですか!?」
 少々いらいらした感じの跡部に裕太は返事をしていない事に気づいた。
 「ではいただきます…」
 
 それはかなり品のいい封筒だった。中には何か入っているようだった。
 
 「え〜と…中を見てもいいんですか?」
 「まぁな。」
 
 跡部から了承を得て裕太はそのなかにあるチケットらしきものを取り出した。
 それは某有名ホテルのディナー券だった。
 
 「な、こんな高そうなものいただけませんよ!」
 思わず突っ返す裕太に跡部はかなり機嫌が悪そうな顔つきをした。
 「別に変な意味はねぇよ。ただウチのジローがX'masに世話になったみてぇだからな。一応ジローの誕生会も兼ねてるんだよ。」
 

 そういえば…と、裕太は兄、周助と幼馴染佐伯、河村とジローといっしょに不二家でパーティをしたことを思い出した。
 ただこれは観月には報告していないことだったので(いちいち報告する必要はないなと思って)ちらりと金田を見ると、金田はちょっと苦笑を交えた顔で裕太を見ていた。
 

 「用件はここまでだ。わざわざ俺様が届に来てやったんだぜ。まさかこねぇなんてことはないよな?」
 ちょっと凄みを利かせて跡部は夕闇にと消えていった。
 

 跡部が去ったあと、金田と裕太は今までの緊張が解けたように大きなため息を履いた。
 「な、なんか俺、むちゃくちゃ緊張しっちゃったよ〜」
 「俺も俺も。観月さんに怒られるときよりドキドキしちゃったぜ。」
 「赤澤部長があぁいうタイプじゃなくてよかった〜」
 「俺たち、部長運はいいよなぁ。たまに頼りないけど。」
 「ところで不二。その、芥川さんの誕生日っていつなんだ。」
 「お。そうだった。え〜と…5月5日!?」
 「なんかすごく芥川さんらしいよね。」
 「なぁ。金田。この日は部活ってなかったか?」
 「え?確かゴールデンウイークは4日だけ練習試合がなかったっけ?」
 「じゃあとりあえず参加できそうだな。」
 「無視してると迎えに来そうな勢いだよね。」
 「寮まで?そりゃ困るかもな。観月さんに何言われるか…」
 「あ、でも不二。なんていって出かけるんだ?」
 「え…?」
 


 そうだ。ホテルでディナーってことはその日は寮に帰れないかもしれないよな、門限早いし…。
 さすがに”氷帝の芥川さんの誕生パーティに参加します”なんて観月さんに報告はできないよな…。
 「とりあえず、実家に帰りますって言うしかないか〜」
 「なんか、観月先輩に『子供の日に家に帰るなんて、裕太君はまだまだお子様ですね』なんて嫌味言われそうだね。」
 「うわぁ。金田ひでぇ」
 
 
 
観月
 
 
 当たり前だけど、兄貴にもその招待状が来ていて、俺は兄貴と一緒にそのホテルの前に来ていた。
 一応正装してこようか…おもったけど、どうせ中学生なんだから制服でいいんじゃない?という兄貴の一言で俺たちは制服。
 
 かなり立派な部類に入る佇まいに俺は入るのに躊躇していた。
 「お?裕太じゃねぇか。」
 後ろから響く大きくよく知った声。
 「君は確か…」
 「赤澤部長!」
 かなりラフな格好をしているから観月さんもよく言うようにかなり遊び人に見える。
 「いやぁどこかで見た制服だなぁと思ったらうちので、しかも裕太か。マジ驚いたぜ。」
 「いつも弟が世話になっているね…ところで君はどうしてここに?」
 「ん?あぁ、親父が忘れ物してな。あ、親父、ここで働いてんだけどさ。」
 以前赤澤部長の父親がホテルマンだということは聞いたことがあったが、まさかここだとは思わなかった。
 「なんかすっげぇ格好した榊先生や制服姿の、ほら、木更津と当たったでかいやつ見たぜ。」
 「ふぅん。そうなんだ。」
 「まぁ、お前らも揉め事起こさねぇように気をつけろよ…って、おっと、デートに遅れちまう…じゃぁな、裕太、不二!」
 「え、あ、はぃ。ご苦労様(?)です」
 「ふふ。デート、がんばってね。」
 


 赤澤部長に後押しされ(?)俺と兄貴は意を決してホテルに入った。
 中は外観ほど格式ばってなく、むしろ普通だった。
 兄貴がフロントで招待状を見せると、マネージャーらしき人が丁寧に応対し、会場への行き方を教えてくれた。
 

 「そういえば、河村さんや佐伯さんはこなかったのかな?」
 「あのねぇ、裕太。二人ともそんなに芥川と面識があるわけじゃなからね。かえって迷惑になっちゃうよ。」
 くだらない世間話とかをしているうちに、会場にたどり着いた。
 そんなに広くはないが、一人の誕生日を祝うには十分すぎるサイズだと思う。

 会場に入ってきた俺達にいち早く樺地が気づき、応対をはじめてくれた。
 その風貌に似合わずかなり細やかな気配りができるいいやつだと思う。
 周りを見回すと氷帝のレギュラー達であろうか、何人も名前を知っているのがいる。
 赤澤部長が言ってた通り、かなりド派手な衣装に身を包んだ榊監督も来ていた。
 兄貴を見ると、いつもとは変わらない笑みを浮かべているが、ちょっと引いているようだ。
 
 「はぁ。やっと氷帝以外の奴発見。」
 振り向いてみると、立海大付属の丸井さんがいた。
 「うまいもん食い放題。って言われたから来たんだけどさ、まわり氷帝だらけじゃん。ビビるってわけじゃねーんだけど、居心地悪くてさー」
 「まぁ解らなくはないよ…ところで、主役の姿が見えないけど…」
 「ん、あぁ、あいつか…寝てるぜ。」
 「え…寝てるって…」
 会場の端っこでイスを3つ並べて寝入っているジローの姿を発見した。
 「まったくヤになっちまうぜ。あいつが起きなきゃ始まんねーっつぅの。」
 「氷帝の人たちも放りっぱなしなんですか?」
 「なんかいつもの事みてーだぜ。さっき、樺地って奴が揺すってたけど起きなかったぜ。」
 「…」
 「あー、目の前に食いモンがあって、オアズケ食らってるみたいでマジむかつく。ちょっと、お前来い!」
 「え?あ…えぇ!」
 「あ、ちょっと待ってよ、僕も行く」
 


 「芥川〜!起〜き〜ろ」
 丸井さんが芥川さんの頬を引っ張っているのですっごく変な顔をしてる。兄貴もなんだか楽しそうだ。
 今度は顔をペチペチ叩くが、あまり効いていないようだ。
 「む、なんて奴。ジャッカルだったら『す、すまねぇブン太』って動揺しやがんのに。」
 「じゃあ今度は僕がやるね」
 兄貴はますますうれしそうな顔をすると、会場のテーブルの上からイチゴの入った皿を持ってきた。
 なんか俺はやな予感がしてきた。何が…っていうか、なんとなく兄貴がよからぬ事をする予感…
 「あ・く・た・が・わ、起きなよ」
 兄貴はゆっくり一つずつイチゴを芥川さんの口の中に入れていった。
 「兄貴、お、おぃ。」
 止めようと俺が口をはさむと、
 「お、さすが不二!面白そうじゃん、俺もやる!」
 丸井さんも楽しそうに兄貴と同じ事をやり始めた。
 兄貴は止められるけど、さすがに丸井さんにはいえない。裕太は青い顔をしながら芥川を見ていることしかできなかった。
 
 「ん〜?」
 かなりの数のイチゴが口に入ったあと、芥川さんがやっと目を覚ましてくれた。よかった!窒息とかしなくて
 「おっ。やっと起きたぜ。」
 「おはよう。芥川。気分はどう?」
 「うわ!?丸井君に不二!うわ、メチャ久しぶりじゃん!」
 「おーい、芥川、起きたぜ!さっさと始めよーぜ!」
 「今日は招待ありがとう。あ、裕太も来てるけどね。」
 「ど、ども…」
 「うわ、俺の好きな奴いっぱいってやつ!?」
 「気に入っていただけて光栄だね。」
 「そっかぁ、だからか〜。内容忘れちまったけど、すっごくいい夢見てた気がすんだよな〜」
 「へぇ。良かったね…」
 「なんか、花とか川とかもあったC〜」
 「ふふ。楽しそうな夢だね」  




 『…芥川さん、それって彼岸が見えてたんじゃないんですか?』

 




     
 

 
 ジロちゃんハピバなタイトルの割に殺されかかってるジロちゃん…orz
 なぜうちでは不二、こんなに黒いんでしょうね。
 甲斐田さんのラジプリ声での不二なら白いんでしょうが、アニプリの声だとどうも黒く感じちゃうんですよね。
 ジロちゃんハピバ〜
 これからも可愛いままでいてください☆ミ
 
 20050502 saga    
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