「はじめちゃん、おめでとう。」
「有難うございます、叔母様。」

「はじめもずいぶんしっかりして…これで観月家も安泰だな。」
「……」



 ・
 ・・
 ・・・
 ・・・・

 嫌な夢。
 カレンダーを見ると5月27日
 僕が生まれためでたい日らしい。
 でも僕にとって一年で一番憂鬱な日。
 めったに会わない親戚連中に突き合わされ、上辺ばかりの愛想笑い…
 今も変わらないか…
 この性格はこういう環境で培われたのかもしれない。




「ほら、そこ!動きが悪いですよ!」

「こわいだ〜ね。」
「観月の奴、ずいぶん機嫌悪いな」




「え〜このクラスは何ページから授業だったかな?」
「156ページからです。教師なんですからしっかりしてください。」




 イライラする。
 空は五月晴れ。それすら気に入らない。

 いつも通り一人で昼食を取ろうとすると、
「観月さ〜ん」
 向日葵のような少年が僕を呼んでいる。
 僕が拾ってやった不二裕太だ。
「何です?裕太君。」
 美しく作った笑いで微笑みかける。
 彼は僕に心酔している。
 無下に扱い嫌に思われるほど僕は愚かではない。

「観月さん、今日誕生日なんですよね!」
 …だから機嫌が悪いんです…なんて裕太にわかるはずはない。
「そうですよ。それにしても裕太君、よくご存知でしたね。」
 一応誉めてやるととても嬉しそうな顔をする。
 …予測通りです。この子の扱いに僕は長けている。

「へへ、観月さん、お誕生日おめでとうございます!これ、ケーキです!」
 そういうと裕太は白い四角い箱をかばんから取り出した。
 メーカーが入っていないから、もしかして…

 裕太の唐突な行動に思考がとまってしまったが、ふと気づくと背中にたくさんの視線を感じる。
 このクラスメートたちはそうだ。僕が裕太にだけ扱いを変えている事、裕太が僕を慕っていることにずいぶん興味があるらしい。

「有難う、裕太君。では部室にでも行きませんか?」
「あ、はい。そうですね。観月さん。」




 中をあけてみると予想通り手作りケーキ。器用なのか少し不恰好だが素人が作ったにしてはそれなりに見える。
「姉さんにお世話になっている人に贈りたいって行ったら手伝ってくれたんです。観月さんあんまり甘いものが好きではなさそうなので、甘さは控えてあります。」
「ありがとう、裕太君。」
「あ、それに紅茶。観月さんほど上手に煎れることはできませんけど…」
「…で、では折角なのでいただきますね。」


 市販されているギスギスした味とは違い、ふんわりやわらかくほのかに甘い…
 まるで、裕太君のよう…と………僕は何を考えている?
 幸せな気持ちで心が満たされていく………違う、これは僕じゃない!

 自分を落ち着かせるため、紅茶を口に運ぶ。
 ふぅ………
 ………なんか少ししょっぱいですね。
「裕太君、これ?」
「み、み、観月さん!?」
 僕が少し意地悪そうな顔をすると、裕太は慌ててしまった。
 いぇ、そんなに脅かすつもりはないんですけど…
「そ、そんなにまずかったですか?」
「?」
 変なことを言うもんだ。僕はいつもの癖で指で前髪を弄ぼうとした、ら。
 手のひらが少しぬれた。
 汗?…いや、涙?泣いているのか、この僕が!?
「観月さん?」
 心配そうに覗き込む裕太。それを見ると、僕は何かが落ちたような気がした。
「いえいえ。とてもおいしかったですよ。驚くほどにね。」
 なんとなく、何年ぶりかのように自分の作らない顔で微笑んでみる。
 裕太は一瞬驚いた顔をしたが、いつもと同じく無邪気な笑顔を見せてくれた。




 

 おかしい、午後から僕の顔の筋肉が気をつけてないと緩んでくる。
 もしや毒キノコの笑いだけでも入っていたのか?と思えるぐらい強力。
 あれ?このクラスってこんなに色鮮やかだったかな?モノクロだと思ってましたよ。
 

 世にも珍しい百面相をしている観月を気味悪がりながら午後の授業は続いていった…



「うおっ、観月!!危ねぇ」
カッコーーン
「あ〜、部長のノーコン…」
「よ、よけねぇあいつが悪いんだろ?」
「んふ♪んふふふふ♪」
「うわぁバックに花が咲いてるよ。」
「こ、こわいだーね。」

 長々とお付き合いありがとうございました
 当サイトで不幸と打てば変換されるかもしれない観月さんハピバ小説です
 シリアス目指したんですけどね…玉砕。
 もっとギャグバージョンはあまりにも兄貴が出張りすぎたので却下。
 こんな扱いですけど観月さん大好きです☆
 これからも精一杯ギャグキャラとして頑張っていってほしいです  

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